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富士フイルム:「それなりに」広告

2020.06.26
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1980年(昭和55年)年制作の富士フイルムテレビCM「それなりに映ります・お名前編」は、その後ながく続く「それなりシリーズ」の第一作。日常性と批評性をもつ画期的なテレビCMである。写真店員岸本加世子さんとお客樹木希林さんの掛け合いは絶妙の呼吸。真面目ではつらつした店員を演ずる岸本のフレッシュさと奇妙な雰囲気の客の組み合わせがなんとも面白い。

セールスメッセージはらしきものはなく、2人の芸で見せるテレビCMだ。へんな人、いびつな人が登場することできれいごとではない現実がつくりだされる。客が「お見合い写真なものですから、とくに美しく」と注文すると、店員は「フジラープリントでしたら、美しい人はより美しく、そうでない人は、それなりに写ります」と答える。

ふつうテレビCMは広告主の立場から視聴者に話しかけるが、このCMは広告主と客の中間で横から物事をみている点が画期的だ。客をおちょくるシニカルな第三者的視線を貫いている。日常性の中のおかしみからホンネがあらわれて、視聴者は笑いながら他人事ではないと感じさせられる。心にひっかるなにものかが残り、これまでの常套的訴求とはちがうリアリティーがある。それが新しいのだ。

1980年は、山口百恵さんが引退し、ジョン・レノンが暗殺された年。70年が「モーレツからビューティフル」と日本人の価値観をシフトさせた年だとすれば、80年は「それなりに」自分の生き方を模索する時代の幕開けだった。

この時代から、広告クリエーターが花形職業として注目を浴び、「おもしろ広告」「フィーリング広告」が人気を集めた。

(c)NHK 日本放送協会富士フイルム/協力:ACC・CM情報センター

参考図書:宣伝会議 岡田芳郎 「日本の歴史的広告 クリエイティブ100選

by:浅見 健太郎


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