日本では「東京一極集中」が問題となっており、経済や文化の中心地は長らく東京に集中する形となっています。そんな中、地方を盛り上げるコンテンツとして「地域ブランド化」への注目が集まっています。
地域ブランド化には、経済の活性化や人口増加など様々なメリットがあります。そこで本記事では、地域ブランド化の成功事例をまとめてご紹介していきます。各地方自治体の特色を活かし、オリジナリティに満ちた手法に注目してみましょう。
コロナ禍で地方の課題が加速
ここではまず、地方の抱える課題について整理しておきます。地域の課題は日本全体の問題にも繋がり、解決が急がれます。特に2020年以降は新型コロナウイルスの流行もあり、もともと地方が抱えていた問題が一気に表面化したという印象があります。
日本は人口減少のフェーズに入っており、すでに年間の出生数は「80万人割れ」というデータも報告されています。特に地方に行くほど少子高齢化の傾向は強くなり、毎日の生活に影響が出ているケースも多いです。人口が減ることによる悪影響の具体例としては、以下が挙げられます。
- 医療機関やサービス業の縮小
- 税収が減り住民サービスが低下
- 公共交通機関の減少
- 住宅の空き家化
- 地域コミュニティ機能不全
たとえば病院が人口の80%以上をカバーするには「27,500人以上の人口規模が必要」となります。しかし人口が減れば、病院の維持が難しくなってしまいます。
また地方財政は人口が多ければ税収も増えますが、少ないとやりくりが大変です。特に少子高齢化が進む地域では、高齢者に係る社会保障費が財政を圧迫しているケースも多いでしょう。
そして利用者が少なくなれば、公共交通機関の撤退も考えられます。結果的には「住民サービスを有料化する」「サービス自体を停止する」といった対策を取らざるを得ず、生活の質が大きく下がってしまいます。
そして「空き家」も大きな問題です。日本は持ち家志向が強いですが、世帯主がいなくなり空き家になってしまう住宅が増加しています。そのまま放置されると事故や火事を誘発し、治安の悪化にも繋がってしまうでしょう。
最近では町内会や子ども会といった地域コミュニティが希薄になっており、特に消防団員がおらず安全性が不安になるケースも多いです。
このように人口が減ることで地域の魅力が低下し、さらに輪を掛けて人口が減るという悪いスパイラルに陥ることも珍しくありません。状況を打破するには、地域の魅力を発信して活性化する取り組みが求められます。
地域経済の停滞
地方の経済停滞の課題としては、以下が挙げられます。
- 労働者が足りない
- 後継者となる若手がいない
- 就業場所がない
地方には魅力的な仕事や働く場所がなく、都市部に若い世代が流出しているという現状があります。これにより企業の後継者もいなくなり、経済自体が縮小する結果に繋がっています。またテレワークや在宅勤務といった「多様な働き方環境」も十分に整っているとは言えず、移住者の定着も望めないケースが多いです。
地域活性化のカギ「地域ブランド」とは
地方の抱える課題はすぐに解決できるものではなく、総合的・長期的な視点での対策が必要です。しかしそんな中でも、「地域ブランド」で成功して地域活性化に繋げている事例も数多く見られます。ここでは、地域ブランドの概要や定義についてご紹介します。
地域ブランドとは
中小企業基盤整備機構によると、地域ブランドとは「地域発の商品・サービスのブランド化と地域イメージのブランド化の相乗効果と好循環により、地域外の資金等を地域内に呼び込むこと」とされています。
よく誤解されやすいのですが、「地域名の入った商品がヒットした」というだけでは地域ブランドとは言えません。商品と地域の評価が高くなり、最終的には「地域外の資金を地域内に呼び込む」ことが求められます。その結果、地域の雇用促進・財政の健全化といったメリットにも繋がっていくでしょう。
「地域」の範囲は様々
地域ブランドの「地域」に明確な定義はなく、様々な種類があります。たとえば狭い範囲では熊本県・黒川温泉の「黒川」など、集落の名前が有名になっているケースが挙げられるでしょう。
一方で広い範囲では、「九州」「ヨーロッパ」など県や国をまたがる範囲の名称が使われる事例もあります。このように、地域ブランドの範囲をどこまで含めるかは多種多様です。その地域独自の「オリジナリティ」があり、歴史などストーリーを共有している範囲であれば十分価値を帯びてきます。
地域ブランドの成功事例一覧
ここでは、地域ブランドの具体的な成功事例についてご紹介します。事例の種類ごとに「①キャラクター・概念」「②農畜産物・食べ物」「③観光・体験」の3つに分けてまとめていきます。
誰もが耳にしたことがある有名な事例や、衰退しかけていた市町村を復活させた事例など、地域活性化の際にはぜひ参考にしてみてください。
地域ブランド事例①キャラクター・スローガン
地域ブランドの分かりやすい事例として「キャラクター」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。2008年に「ゆるキャラ」が新語・流行語大賞にノミネートされ、多くのキャラクターたちが各地で誕生しました。
ゆるキャラは単にカワイイだけでなく、大きな経済効果も呼び起こしてくれます。実際に「ひこにゃん」の登場前と後で、滋賀県・彦根市の観光客は約2倍の差があったというデータがあります。
ここでは、地域ブランドとして活躍しているキャラクターや概念の成功事例について詳しくご紹介していきます。
(1)くまモン|熊本県
「くまモン」は、熊本県のPRのために作成されたゆるキャラです。2011年3月の九州新幹線全線開業を控えた2010年、「くまもとサプライズ!」というキャンペーンで誕生しました。
くまモンが大ヒットした裏側には、巧みなPR戦略がありました。まず「熊本県のキャラクター」という素性を隠し、「謎のキャラクター」として各地に出没する活動を行いました。
これによりSNS等で自然発生的に話題となり、全国的な知名度を上げていきます。
そして何よりも特徴的な点としては「ライセンスフリー」が挙げられるでしょう。熊本県の許可を得れば「使用料不要」でグッズを作成できるとあり、様々な媒体で広がっています。
「使用料が入ってこないと利益にならないのでは?」と思ってしまいますが、熊本県にとっては「県のPRになる」というメリットがあります。さらにコラボ先の企業によっては、売り上げの一部を寄付してくれる場合もあります。特に熊本地震以降は、チャリティーとしての寄付も増えています。
(2)イカール星人|北海道・函館市
北海道・函館市は古くから海運業が栄え、西洋の文化を取り入れたおしゃれな街並みも魅力です。しかし、年々観光客が減少しているのが課題となっていました。そんな中2008年に予算230万円でPR動画の作成が公募され、「イカール星人」が誕生しました。
イカール星人の動画はSNSで話題となり、120万回を超える視聴回数を記録しました。ヒットの要因としては、ありきたりな市町村PR動画ではなく「作品としての純粋な面白さ」に振り切ったことが挙げられます。
函館市ではTシャツや雑貨といったグッズを展開し、観光客へのアピールに活用しています。また東京や大阪といった都市でのイベントにも出演することで、イメージアップを図りました。こういった取り組みを通して、2009年には函館市が「最も魅力のある市」の1位を獲得する結果に繋がっています。
もちろん函館市にはもともと食・文化・歴史的建築といった魅力がたくさんあったことが前提にありますが、イカール星人による「奇異をてらった」取り組みが起爆剤となったことは確かです。
(3)ないものはない|島根県・海士町
島根県・海士町(あまちょう)は、「ないものはない」というスローガンで有名になりました。「地方創生」の好例として2014年に安倍元首相が演説に取り上げたことで、一気に全国的な知名度が高まったという経緯があります。その演説の内容は、以下の通りです。
『隠岐の海に浮かぶ島根県海士町では、この言葉がロゴマークになっています。都会のような便利さは無い。しかし、海士町の未来のために大事なものは、全てここにある、というメッセージです。「この島にしかない」ものを活かすことで、大きな成功を収めています。
大きな都市を真似るのではなく、その個性を最大限に活かしていく。発想の転換が必要です。それぞれの町が、「本物はここにしかない」という気概を持てば、景色は一変するに違いありません。』
一見「なにもない」と諦めているような印象を受けるかもしれません。しかし実は「無いものが無い(何でもある)」という逆説的な意味合いを含んでいることに気づくと、衝撃を受けるのではないでしょうか。
海士町では「島全体のブランド化」に取り組んでいるのが特徴です。具体的には「CAS」という冷凍技術を使い、特産品の白イカ、岩ガキを都市へと移送・販売しています。またブランド牛である隠岐牛を育成し、品質の高さで評価されるに至っています。
また特産品を使ったユニークなPRだけでなく、「移住者の受け入れ」を積極的に行っていることも注目されています。たとえば島根県主導の「わくわく島根生活実現支援事業」は、東京23区から移住した方に移住支援金(世帯:100万円、単身:60万円)が支給される制度です。
また海士町独自の施策としては、「出産準備金」として10万円の給付を行っています。これは子供の人数が増えるほど高くなり、「2人目20万円、3人目50万円、4人目以降100万円」となります。
このように町を挙げて人口獲得に取り組んでおり、学生を対象にした「島留学」やUターン、Iターンの受け入れにも取り組み人口増加に繋げています。
地域ブランド事例②農畜産物・食べ物
ここでは、農畜産物や食べ物を地域ブランド化している成功事例をご紹介します。同じ種類の農産物でも、ブランド化が成功すると「競争性の優位」を獲得できます。これにより収益率が上がり、地域の発展にも繋がるというメリットがあるでしょう。ブランド化に成功したストーリーや背景についても、ぜひチェックしてみてください。
(4)関アジ・関サバ|大分県
関アジや関サバは、大分県と愛媛県付近の海域・豊後水道で一本釣りされるブランド魚です。1988年に大分県の漁協がPR活動を行ったことで、全国的に有名となりました。
一本釣りすることで魚を傷付けず、新鮮な状態で出荷できるというメリットがあります。釣られてすぐの魚はパニック状態のため、落ち着かせるため別のいけすに1日保管するという工夫も行われています。
さらに1匹ずつ手作業で神経抜き・活〆といった作業を行うことで、遠く離れた都心部でも美味しい状態で届けられます。関アジや関サバは、魚自体の美味しさだけでなく「品質維持の工夫」も含めて地域ブランドとして評価されているのが特徴です。
(5)讃岐うどん|香川県
香川県は瀬戸内海式気候に属し、晴れの日が多く空気が乾燥しているので古くから小麦を生産してきました。農家の副業としてうどんを生産してきた歴史があり、地元の人たちの食文化として愛されてきました。
讃岐うどんは、「セルフ方式」という独特な店舗スタイルも魅力の一つです。調理場と客席の間にあるカウンターにトレーを置いて、横に移動しながらお好みのうどんやトッピングを自由に選びます。最後にレジで精算し、食べ終わったら自分で返却口に戻すシステムとなっています。
そんな香川のうどんが「讃岐うどん」として地域ブランド化されたのは、1960年代頃です。讃岐うどんの食べ歩きマップが作成されたり、映画「UDON」が公開されたりといった要因により、全国的に知名度が上がっていきました。
讃岐うどんは地域ブランドでありながら、「本場以外でも気軽に食べられる」という点が特徴的です。全国チェーン展開している讃岐うどん店は品質の高さが人気で、本場さながらの味が低価格で試せます。チェーン店でも香川県の「セルフ方式」が採用されており、店舗の独特なスタイルも含めて地域ブランドの価値向上に一役買っています。
(6)夕張メロン|北海道・夕張市
「夕張メロン」は、北海道・夕張市を代表する地域ブランドです。地元で古くから作られていたものではなく、品種改良を重ねて生み出されたという特徴があります。
実は夕張市はもともと、炭鉱で栄えた町でした。しかし時代の流れで炭鉱が閉鎖されることをきっかけに、代わりになる産業を興そうという目的で「夕張メロン」の開発が進められたのです。
当時赤い果肉のメロンは珍しく、東京の仲買業者からは「カボチャメロン」と笑われたそうです。何とかして夕張メロンのPRをしようと考えだされたのが「野球選手の口コミでの宣伝効果」でした。
札幌で行われていた巨人戦のホームラン賞に、夕張メロンを持ち込んだのです。当時読売巨人軍は絶対的な人気があったので、選手が「北海道の楽しみは夕張メロン」と話したことで全国的な知名度が上がりました。
ただし産地の北海道から都市部への距離は遠く、販売経路の「輸送」が大きなネックとなっていました。実際に最初の頃は、販売元のデパートに対して「家に届いたら腐っていた」というクレームが後を絶ちませんでした。
これを改善するために行ったのが「産地直送」です。現在では当たり前の手法ですが、当時のデパートは「現物を確認せずに売るのは品質が担保できない」と難色を示していました。しかしそれでも夕張農協職員は諦めず、選果場を視察してもらうことにしたのです。
選果場では、わずかでも基準に満たないメロンは問答無用で廃棄されます。その様子を見て、デパートも産地直送に同意しました。こういった地道な取り組みにより、夕張メロンは全国的に夏の風物詩として広がっていったのです。現在では、夕張メロンは一般的なメロンの約2倍という高値で取引されています。
(7)宇都宮餃子|栃木県・宇都宮市
宇都宮市は知名度の低さに悩んでおり、「市の特徴が何もない」という状態を何とかしたいという思いがありました。そこで観光課は全国統計の「餃子の消費量日本一」というデータに目を付け、観光の目玉になるよう仕掛けたのです。
もともとこの地域は旧満州からの引揚者が多く、そういった方たちが餃子店を開いたというルーツがあります。そのため「メニューは餃子のみ」という、シンプルな専門店が立ち並ぶのが特徴です。他地域に比べるとリーズナブルで、1皿200円程度の価格設定となっています。地元民は、飲みに行ったりおやつとして食べたりと気軽に利用していました。
そんな宇都宮餃子がブレイクするきっかけとなったのは、『おまかせ!山田商会』というTV番組でした。番組で7週連続して宇都宮餃子が取り上げられたことで、全国的な知名度が上昇していきます。
TVによるPR効果は大きいですが、それだけでなく、宇都宮餃子は「地域に根差した本物の郷土文化だった」ということも大切な要因でしょう。「売れるために」頭で考えた特産品ではなく、地域の人たちにとっては「普通」のことだったからこそ成功したと考えられます。
地域ブランド事例③観光・体験
ここでは、観光や体験そのものを地域ブランド化した事例をご紹介します。最近では単に製品を購入するだけではなく、一連の体験を対象にお金を払う「コト消費」がトレンドです。観光や体験といったコト消費は、地域に観光客を呼び込む方法としても有効です。
(8)アートの島|香川県・直島
香川県の「直島」は、アートの島としての地域ブランド化に成功しています。多くの施設は、岡山県に本社を置くベネッセホールディングスによって建設されました。創業者の福武哲彦が「世界中の子どもたちが集える場所を作りたい」との思いを抱いていたことと、「直島に文化エリアを開発したい」という町長の思いが重なったことからスタートしたという経緯があります。
草間彌生のカボチャや地中美術館など有名なアートのほとんどは、「島を訪れないと見られない」という特徴があります。島という環境も含めたアートのため、絵画や彫刻のように移動展示ができないのです。
瀬戸内海の自然資源とアートを組み合わせることで、ブランド価値の高い体験を提供していると言えるでしょう。また島は自転車で1時間半程度で回れる規模のため、サイクリングでの移動も特別な体験として人気です。
(9)農村民泊|大分県・安心院町
大分県の安心院町では、「農村民泊」の取り組みで地域ブランド化を果たしました。1996年に始まったこの取り組みは「一回泊まれば遠い親戚、十回泊まれば本当の親戚」のキャッチフレーズが話題となり、多くの観光客の呼び込みに成功しています。
具体的な内容としては、農村の民家に宿泊して実際の生活を体験するというものです。家族同然の温かい時間を過ごせることで、ただの観光旅行には無いブランド価値を提供しています。
安心院が優れている点は、会員制の「安心院方式」を生み出したことにあります。具体的には、宿泊者を1日1組に限定し、各受入家族が普段行っている農業を一緒に手伝うといった「体験に重点を置く」スタイルです。お客様には「親戚カード」が発行され、スタンプが10個貯まると「本当の親戚」として迎えられるというユニークさも話題を集めました。
安心院の農村民泊はグリーンツーリズムの発展に大きく貢献したとして、2020年には「第12回観光庁長官表彰」を受賞しています。
(10)ワインツーリズムやまなし|山梨県
山梨県では2008年から「ワインツーリズムやまなし」が開催されており、毎年多くの参加者が集まっています。単にワインを販売するだけでなく、宿泊・観光といった付随サービス効果も期待できるイベントとして注目されています。
山梨県には約80社のワイナリーがあり、全国トップを誇ります。しかしこれを十分に生かし切れていないのが課題となっていました。そこでぶどう農家、ワイナリー、飲食店、商店、朝市、NPO、行政などが手を組み、地域を挙げてワインツーリズムに取り組みました。
イベント当日は循環バスが運行され、地域を自由に巡ることができます。実際にブドウ畑の風を感じながらテイスティングができ、秋には紅葉の景色も一緒に楽しめると人気です。またワイナリーの醸造家にとっても、消費者と直接コミュニケーションが取れるというメリットがあります。ワインの感想を商品開発に生かすなど、良い循環が生まれています。
地域ブランド化の手順
ここでは、成功する地域ブランドの代表的な手順をご紹介します。「どこから手を付けたらいいのか分からない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
①目的を設定する
まずは、「地域ブランド化することで、何を成し遂げたいのか」を明確化します。主体となる組織だけでなく、地域や関係団体での意識を合わせておくことが重要です。
②ストーリー・コンセプトをまとめる
これまでご紹介してきたように、地域ブランドにはそれぞれ独自の「ストーリー」があります。地域資源の魅力が伝わりやすいよう、一般消費者に分かりやすいコンセプトを設定するとその後のPR活動もしやすくなります。
③商品やサービスを展開する
具体的なイメージが固まったら、ここで初めて商品やサービスを展開していきます。その際、競合する商品との差別化・消費者ニーズの調査・キャッチーなネーミング等にも配慮しましょう。
④販促活動をする
地域ブランドが成功するかどうかは、販促活動の巧みさに左右されるといっても過言ではありません。具体的にはパンフレットやカタログを製作したり、イベントに出展したりする手法が一般的です。
また最近では、WEBを使ったデジタルマーケティングも影響力を増してきています。オウンドメディアを開設してPRしたり、SNSでの口コミを狙ったり等、方法は多種多様です。
地域ブランドのメリット
ここでは地域ブランドに取り組むメリットについて、簡単にご紹介します。
地域活性化に繋がる
地域ブランドが成功すると、商品が売れることで単純に地域経済が潤います。またそれだけでなく、「地域への観光客が増える」「移住者の増加につながる」といった波及効果もあるでしょう。
製品・サービスの収益率が高くなる
たとえば夕張市の事例紹介でご紹介したように、夕張メロンは一般のメロンより「2倍高い価格」で売られています。このように、同種の農産物を作っていても利益率が各段に高くなるのがメリットです。
もちろん開発費やPR費用は余計に掛かってきますが、地域ブランド化が成功した後に十分回収できると考えられます。
市町村単位での活動が可能
地域ブランドの「地域」に明確な定義は無いため、県・市町村・集落等どんな規模でもスタートできます。実際に地域ブランドは市町村単位が主体で行われているケースが多く、「小回りが利く」のは大きなメリットでしょう。規模が小さくなることで、より住民の感覚や意識を反映させやすくなります。
地域ブランドのデメリット・課題
一方で、地域ブランド化にはデメリットや課題もあります。これらを参考にして、失敗しない計画を立てましょう。
コストや手間が掛かる
地域ブランドは品種改良や販促費用など、付加価値を高めるためのコストが掛かります。またブランド化に成功した後も、維持管理のためにある程度の費用が継続して必要になる場合が多いでしょう。
人口が増えるとは限らない
地域ブランドで商品が売れたとしても、その地域への移住者が増えるという保証はありません。将来的な担い手不足解消のためにも、人口維持の対策は別途行う必要があります。
「地域ブランド」はなぜ必要?
「地域ブランド化しなくてもそこそこ売れているのに、なぜブランド化する必要があるの?」と思われるかもしれません。しかしブランド化には売り上げUPだけでない役割もあります。
地域格差が広がっている
少子高齢化に伴い、「人口が増える地域」と「減る地域」の格差は広がりつつあります。そうした中で、何も変革を起こさず変わらないままの地域は取り残される一方なのが現実です。
日本政府も「地方から国全体へのボトムアップの成長」を掲げており、アクションを起こすことが活性化の第一歩と期待されているのです。
国も地域ブランドを支援
国では、地域ブランドを活性化し守っていくための様々な取組を行っています。ここでは、その一部をご紹介します。
デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業
中小企業庁では、優れたコンセプトや魅力的な地域資源を保有している中小企業者が海外需要を取り込んでいけるよう、越境ECを積極的に取り入れたブランディング・プロモーション等の取組を支援しています。補助額は「上限500万円」で、ブランディングやプロモーション等のサービスに活用できます。
地域団体商標制度
特許庁では「地域団体商標制度」を創設し、地域ブランドの保護に取り組んでいます。これは「地域名」と「商品(サービス)名」からなる地域ブランドを保護することにより、地域経済の活性化を目的とした制度です。
認定されると「地域団体商標マーク」の使用が許諾され、商品やサービスに掲示できます。信用・信頼の向上のために取得されるケースが多いです。
また取得を通して地域の絆が深まったり、ブランディングが成功したりというメリットもあります。
参考:「地域団体商標制度」
まとめ|地域活性化は「ブランド化」がカギ
ここまで、地域ブランド化の成功事例をご紹介してきました。誰もが聞いたことのある地域ブランドには、商品本来の魅力を伝える「ストーリーや販促活動」が大きなポイントとなってきます。
国でも地域ブランド化を支援しており、補助金制度を活用すればブランディング費用をまかなえる場合もあります。地域ブランドには地方の活性化や人口増加といった大きな目的もあるので、ぜひ積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。